fc2ブログ

月別アーカイブ

 2008年12月 

設計士の良心 

朝から晩までPCにかじりついていて、社屋から出る事の少ない大橋です。
そんな出不精な私ですが、今日は社長と共に大分の藤丸建設さんの住宅を見学に行ってきました。
新山口駅から新幹線⇒特急ソニックに乗り継いで片道2時間…大分市街から車で30分…遠路はるばる大分まで出向いたのには訳があります。

『九州山口匠の会』の藤丸建設さんは、大工(棟梁)さんを含め総勢20人、杉と桧と珪藻土を使った手造り住宅を展開している地域の工務店です。その藤丸建設さんが、一つの住宅団地内の連続する4区画に、同時に着工させた4棟の住宅が完成しました(土地付の建売ではありません。たまたま土地を購入された4組のお施主様が、それぞれ藤丸建設さんに建築を依頼されたのです…… すごすぎます…)。4棟の施工は全て同じ工務店で、同じ構造で、仕様も杉と桧と珪藻土。ただ一つ違うのは、4棟の住宅の設計が全て異なる設計士によるものだということになれば、当然設計者の設計力や思想の違いが完成した建物に現れてくるはずです。それらを同時に見ることのできる良い機会であるため、こうして大分までやってきました。

大分県では一目置かれる藤丸建設さん。どの建物も自然味あふれて心地よく、4棟とも施主様の希望を十分に満足させうる作品でしたが、その中でも秀逸だったのがこのお宅です↓

右の写真:真ん中の女性が設計士さん  横の二人は担当の大工さんです
          
907D2.jpg907D1_20090411181043.jpg

外観こそシンプルですが、内部に大きなライトコートとルーフバルコニーを持つ大屋根のお宅です。
担当された設計士さんの案内で1時間半程度見学させていただきましたが、きっとこの方はお施主様の要望とコストを配慮された上で、同じ木造住宅を作るならば設計士として何が出来るのかを繰り返し繰り返し考え、図面を描き、何度も何度も現場に足を運ばれたのだろうな~と思いながらお話をうかがっていました。


この写真だけではお伝えすることも出来ませんし、もしかすると一般の方には〝木をたくさん使った家〟にしか見えないかもしれません。ですが設計という同じ職能を行使する者の視点からすれば、優れた平面計画に始まり、高さを抑えた断面構成、部材寸法の選択やサッシ・建具との納まり、素材間の取り合わせに至るまで、ストイックとも言える設計姿勢が随所に見てとれました。また繊細な寸法設定の中で生み出される凛とした空間と、生活に対する女性ならではの細やかな配慮、設計士の良心が感じられる作品で、とても好感をもって拝見させていただきました。

住宅はそれを建てたいと望む人の要望と、コスト、法律、技術、時間の総合的なバランスの中で生み出されます。そんな微妙なバランスの中では、設計者としての職能の本意が時として失われがちですが、今日の4棟のお宅のように設計士の良心が感じ取れる家を私も手がけていきたいと思っています。

スポンサーサイト